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精神疾患のある親をもつ子どもの体験と
学校での相談状況

成人後の実態調査

この調査は、精神疾患のある親に育てられた子どもの立場の方を対象として,子ども時代(小・中・高校生)に学校で受けた支援や学校で必要だったと思われる支援を把握することを目的として実施しました。「精神疾患の親をもつ子どもの会(こどもぴあ)」のつどいに参加したことのある、20歳以上の成人の方240名にウェブ上のアンケート調査の協力を依頼し、2019年10-11月に120名から回答を得ました。詳しい調査結果は、以下の論文をご覧ください。

https://doi.org/10.11236/jph.20-036

主な結果と考察

学校の先生に相談しなかった人が小学生の頃で91.7%、高校生でも78.6%と多く、相談することの難しさが浮き彫りになりました。学校で先生にしてもらって嬉しかったことは、話を聴いてくれたこと、認めてくれたこと、気にかけてくれたことなどであり、性急に家庭の問題に介入するのではなく、まず子ども自身に寄り添うことが大切だと考えられました。また、精神疾患への偏見は、子どもが問題を隠すことにつながるため、周囲の正しい理解が必要だと考えられました。

ヤングケアラーとしての役割としては、情緒的役割が最も多く、約6割であり、精神疾患のある親をもつ子どもの特徴でした。子どもが大変だったと感じた体験の多くは、医療や福祉サービスや学校の支援で対応できるとわかりました。

子ども時代の情緒的ケアの長期的影響

ヤングケアラーとして精神疾患のある親をケアする時、最も多いケア内容は情緒的ケアです。子ども時代の逆境的体験Adverse Childhood Experiences (ACEs)は、大人になった後も身体的・精神的に長期的な影響を及ぼすことが明らかになっています。私たちは、上記の調査データを用いて、現在の回答者の精神的健康と、情緒的ケア等ACEsの関連を検討しました。その結果、子ども時代に情緒的ケアを提供していた人は、そうでない人に比べて、現在の精神的健康が良くない傾向にありました。情緒的ケアというのは、単に愚痴を聴くという類のものではなく、相手の精神状態をみながら、悪くならないように気をつけたり、うつ状態のときに気分が下がらないように接するなど気を使うケアになります。

そのようなケアは、身体介護や家事支援のように見えにくいケアではありますが、精神疾患の場合は重要なケアとなります。子どもが話を聴くことは家族であれば当然のことかもしれません。しかし、それが過度な負担になる場合は、積極的に訪問看護など専門家の支援を利用することが望まれます。

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Kageyama, M.;Sakamoto, T.; Kobayashi, A.;Hirama, A.; Tamura, H.;Yokoyama, K. Childhood Adversities and Psychological Health of Adult Children of Parents with Mental Illness in Japan. Healthcare 2023, 11, 214.
 
https://doi.org/10.3390/healthcare11020214

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研究体制

【研究責任者】

蔭山正子(大阪大学大学院医学系研究科・准教授,こどもぴあ運営メンバー)

【共同研究者】

・埼玉県立大学/こどもぴあ運営メンバー・横山恵子
・こどもぴあ運営メンバー・坂本拓/小林鮎奈/ほか

倫理審査

大阪大学医学部附属病院の倫理審査委員会

(2019年7月29日承認、承認番号19152)

研究費

本研究は、基盤研究(B)「精神障がい者の予防的・家族包括的育児支援プログラムの開発」(研究代表者:蔭山正子)にて行われ、JSPS科研費JP19H03960の助成を受けた。

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